放射線技術×データサイエンス

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「対話形式だからわかりやすい!MRIの教科書」は初めてのMRIの教科書としてオススメ

本記事は「対話形式だからわかりやすい!MRIの教科書」の第1章と第2章の書評記事です。 本書は難しい数式を使わず噛み砕いた表現を使うことで、MRI の原理を気軽にわかりやすく理解することを目的に企画されたようです。一貫して対話形式で進む登場人物たちのやり取りを読むことで、難しいMRIの基礎原理を習得することができます。そのため本書はこれからMRIを学びたいと考えている人にとっての「最初の1冊」として適した本であると思います。

目次

きっかけ

ちょっと前にMRIの情報収集をしているときに面白そうなタイトルの本書を見つけました。タイトルを見て中身を読んでみたいと思いましたが、買おうとまでは思えませんでした。著者情報の記載はあるも、誰だかわからないし、個人出版のようなので情報に信頼性があるかがわからなかったからです。

そんなときに以下のツイートを見ました。Kindleストアで著者のTwitterアカウント(@MRI_taiwa)が記載されていたので、フォローしていたので気づくことができました。

このツイートに乗っかれば、気になってた本が読める!と思い、ツイートに返信してみました。数回のやり取りの後、この記事の執筆にいたりました。つまり、ブログでこちらの本を宣伝する代わりに本を読ませていただく(報酬を頂く)こととなりました。

可能な限りニュートラルな立場で書評をしたつもりですが、この点を理解した上で読んでいただければと思います。それでは以下に書評の内容を書いていきます。

本書はMRI基礎原理を学ぶために企画されている

この本の対象はMRIの基礎原理について興味がある、しかし、これまでじっくりと取り組んだことのない方、あるいは一度取り組もうとしたけれど挫折をした方だそうです。たしかに本書の内容はMRIの基礎について広く、浅く、易しく書かれています。

第1章はMRI検査全体についての大まかな説明

第1章を読むとMRIについての全体像を把握することができます。MRIの原理は非常に難しいため、まずは全体を知って、それから細かなところを深堀するほうがいいという筆者の考えから、この章を設けたようです。MRIのことをよく知らない人でも1章に書いてあることはなんとなく聞いたことがあると思います。

第2章では本格的にMRI装置のことについて

第2章ではMRI装置本体の原理を知ることができます。MRIは複数のコイルから成り立つという話から始まり、その後はそれぞれのコイルの役割について詳しく説明されています。

第2章は図をふんだんに使われており、筆者の熱量を感じられます。傾斜磁場の説明ではかなり頑張って作図されているということが垣間見えます。わかりやすく説明するために工夫を凝らしてある、素晴らしい本だと思いました。

本書の良い点

  • 対話形式は内容が頭に入ってきやすい
  • 動画(GIF)が面白い

本書はAさんとBさんと博士の3人の対話で内容が進んでいきます。僕が知る限り対話形式のMRIの本はありません。あえていうとすれば、荒木力先生の「MRI完全解説」をストーリーにしたものといった感じでしょうか。「MRI完全解説」はQ and A方式の教科書であり、趣向としては似ているのかなと思いました。ちなみに「MRI完全解説」は僕が磁気共鳴専門技術者試験に合格するために、最も参考にした書籍です。

また、本書は電子書籍の特徴を活かし、要所要所に動画(GIF)のリンクが貼られています。

これは非常に面白い試みだと思いました。MRIの原理は静止画だと理解が難しいため、動画で見ることができればその一助になると思います。これからもGIFをたくさん作っていただけるとさらに面白い本になると思いました。

本書の惜しい点

  • 登場人物がわからなくなる
  • 章ごとで販売されているため、1冊で考えたときの値段が高い

本書はAさんとBさんと博士の3人のやりとりで話が進んでいきます。僕は頭のメモリが弱いので、たびたびAさんとBさんがどっちがどっちかわからなくなりました。名前で表記していただければそのストレスもなかったのかなと思いました。

そして本書の値段ですが1章が300円、2章が500円となります。たしかにそれぞれの章で話は完結していますが、すべての章を合わせた1冊の値段で考えるとそれなりの値段になります。まとめ買いをすれば安く買える仕組みがあってもいいかと思いました。

しかしながら、本書はkindle unlimitedに登録すれば無料で読めます。30日間無料体験キャンペーンを長いことしているようです。本書が気になるけど、お金を出したくない方はkindle unlimitedも一つの方法かと思います。

今後の章に期待大!

2020年8月現在、まだ2章分しか販売されていませんが、その内容はMRIを学ぼうと考える人にとっての「初めの1冊」として非常に良いものだと思います。

とはいうものの、僕は本書に記載されていた「シールドフィンガー」や「シム」の言葉の由来について全く知りませんでした。臨床で直結する知識ではなく、いわゆる豆知識ですが、こういったセレンディピティともいえる発見があったので、結果的に僕は読んでよかったと思いました。

今後も続編発刊が予定されているようですので、続編にも大きく期待したいと思います。